私の名前は桃太郎。気づいた時にはこの桃の中だった。

　いい加減、私も現世へ出なければならない。

　だけど、出られずにいる。

 　私は躊躇っているのだ。

　現世という、日常へ一歩足を踏み出すのを。

　桃の中は誰も干渉してこない。

　人間という人間に会いたくない今、このままでいたいという気持ちの方が勝っている。

　もう少し、このままで。

　もう少し。

　

　おばあさん：「さぁ！京極、早くこの桃を一刀両断にしたまえ」

　おじいさん：「……それは榎さんの役目でしょう」

　おばあさん：「僕が何故そんな労力を使わねばならん！こら桃！こうなったら、お前が　　　　　　　　
　　　　自動的に割れろ！！」

　私はまだ躊躇っている……

　鬼：「やっぱり俺の出番はねーのか」